配偶者の税額軽減(配偶者控除)を利用し相続税を大幅に減税する方法

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配偶者の税額軽減(配偶者控除)を利用し相続税を大幅に減税する方法

2018.04.24

カテゴリ : 相続税 / 贈与税

配偶者の税額軽減(配偶者控除)を利用し相続税を大幅に減税する方法

財産を所有している父や母などの親族が亡くなれば、その相続人が財産を引き継ぎます。多くの場合、配偶者や子供が財産を引き継ぎます。しかし、その財産は被相続人が1人で築いたものかといえば、そうではありません。

 

被相続人に配偶者がいれば、夫婦で長い間生活しながら、一緒に築いてきたものです。そのため、「配偶者に相続税を課すのはおかしいのではないか」という考えがあります。

そこで考えられたのが、「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」です。

 

ここでは、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を利用し、相続税を大幅に減税する方法について解説します。

1.配偶者の税額軽減とは

配偶者の税額軽減とは、被相続人の死後、配偶者の老後の生活保障などを配慮して、一定の書面を添付することで、配偶者が支払う相続税の金額を軽減することです。配偶者の税額を軽減するため、相続財産の金額に一定の非課税枠を設けています。

 

配偶者控除の非課税枠は具体的には次の金額です。

①1億6,000万円

②民法上の法定相続分

①と②のどちらか大きい金額まで非課税

 

最低でも配偶者が相続する財産が1億6000万円までの場合は、配偶者に対する相続税が非課税になる、とても大きな節税効果のある制度です。

 

配偶者控除は、大きな節税効果が期待できる制度のため、無条件で利用することはできません。利用するためには一定の要件があります。

その要件を確認しましょう。

(1)申告期限までに遺産分割が確定していること

配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、「配偶者が引き継いだ」相続財産の金額に一定の非課税枠を設けている制度です。

つまり、まだ配偶者がどれぐらいの相続財産を引き継ぐか決まっていないと、配偶者の税額軽減(配偶者控除)の使いようがありません。

 

そのため、申告期限までに遺産分割が確定していることを、要件の1つにしています。しかし、配偶者の税額軽減(配偶者控除)ができる・できないで納付する相続税の金額に大きな影響を与えるため、次の場合には、申告期限までに遺産分割が確定していなくても、配偶者の税額軽減(配偶者控除)ができるようになっています。

 

①期限内に相続税の申告をして、分割見込書を添付した場合

相続税の申告期限内に、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、申告期限から3年以内にきちんと分割した場合は、申告期限までに遺産分割が確定していなくても、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることができます。

 

当初の期限内申告では、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けずに相続税を納付しているため、「更正の請求」をし、払い過ぎた相続税を取り戻します。

 

※どうしてもやむを得ない理由で、申告期限から3年たっても遺産を分割出来ない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」をだすことで、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることができる場合があります。

 

②期限後申告

期限内の相続税の申告を忘れていた場合も、遺産分割が確定している場合は、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることができます。

 

その他、税務署の調査などで、知らなかった財産が見つかり、申告(または修正申告)が必要になった場合も配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることができます(故意に財産を隠していた場合を除く)。

 

(2)一定の資料を添付すること

配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けるためには、相続税の申告書に次の書類を添付する必要があります。

 

  • 申告書の第5表「配偶者の税額軽減額の計算書」
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 遺言書または遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書の写しを添付する場合)

 

(3)被相続人と婚姻の届出をしている配偶者であること

配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けられる配偶者とは、戸籍上の配偶者に限られます。そのため、内縁の妻などが相続財産を引き継いだとしても、配偶者の税額軽減(配偶者控除)は受けることができません。

 

2.民法に定める法定相続分

配偶者の税額軽減(配偶者控除)では、1億6,000万円と民法上の法定相続分のどちらか大きい金額までが、非課税です。そのため、配偶者の税額軽減(配偶者控除)の計算をするためには、法定相続分について理解する必要があります。

 

法定相続分とは、民法で決められている相続人(法定相続人)が引き継ぐことができる財産の目安のことです。法定相続人には順位があります。

 

(1)第1順位 配偶者と子

配偶者と子がいる場合は、配偶者と子が相続人となります。法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。子が複数いる場合は、1/2の財産を人数に応じて均等に分けます。

 

(2)第2順位 配偶者と父母(祖父母)

子がいない場合は、配偶者と父母が相続人となります。父母もいない場合は祖父母が代わりに相続人となります。

法定相続分は配偶者が2/3、父母(祖父母)が1/3です。父母ともに健在な場合は、1/3を均等に分けます。

 

(3)第3順位 配偶者と被相続人の兄弟姉妹

子や父母(祖父母)がいない場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

法定相続分は配偶者が3/4、被相続人の兄弟姉妹が1/4です。

被相続人の兄弟姉妹が複数いる場合は、1/4の財産を人数に応じて均等に分けます。

3.配偶者の税額軽減を使った場合の計算例

今までは、配偶者の税額軽減(配偶者控除)の内容を確認してきました。

ここでは、具体的にその計算方法を見ていきましょう。

 

例)相続人が配偶者と子の合計2人、相続財産が1億7,000万円の場合

 

相続税では、どの相続であっても受けられる基礎控除があります。

基礎控除の計算方法は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。

 

  • 相続財産…1億7,000万円
  • 基礎控除額…3,000万円+600万円×2人=4,200万円
  • 差引金額…1億7,000万円-4,200万円=1億2,800万円

 

このケースをもとに、相続財産を法定相続分で分ける場合と、配偶者がすべて引き継ぐ場合を確認します。

 

(1)相続財産を法定相続分で分ける場合

相続人が配偶者と子であるため、法定相続分は1/2ずつです。

法定相続分で分けた財産は次の通りです。

 

  • 配偶者…1億2,800万円×1/2=6,400万円
  • 子…1億2,800万円×1/2=6,400万円

 

配偶者が引き継いだ基礎控除後の課税財産は、1億6,000万円以下と民法上の法定相続分以内のどちらにもあてはまり、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることができます。そのため、配偶者には相続税がかかりません。子のみ相続税を納付します。

 

子が引き継いだ基礎控除後の課税財産6,400万円に対する税率は、「30%-控除額700万円」です。そのため、納付する相続税は次のようになります。

 

相続税額=6,400万円×30%-控除額700万円=1,220万円

 

(2)配偶者が相続財産のすべてを引き継ぐ場合

配偶者が相続財産のすべてを引き継ぐ場合の財産は、次の通りです。

 

  • 配偶者…1億2,800万円
  • 子…0円

 

配偶者が引き継いだ基礎控除後の課税財産は、1億6,000万円以下と民法上の法定相続分以内のどちらにもあてはまり、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受けることができます。そのため、配偶者には相続税がかかりません。

また、子は相続財産を引き継いでいないので相続税はかからないため、この相続において納める税金はありません。

 

4.配偶者の税額軽減を利用する場合の注意点

ここでは、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受ける場合の注意点を見ていきましょう。

 

(1)隠匿財産には配偶者の税額軽減(配偶者控除)を適用できない

配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、納税者にとってとても有利な制度です。そのため、故意に隠していた財産には適用できないので、注意が必要です。

 

(2)配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受ける場合は、二次相続のことまで考える

配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受ける場合で最も重要なことは、二次相続のことです。

二次相続とは、前の相続で財産を受け取った人が亡くなり、引き継いだ財産をもう一度、相続人に相続することです。前の相続を一次相続、2回目の相続を二次相続といいます。

 

相続税の税率は一定ではなく、相続財産が高ければ高いほど、税率も高くなります。そのため、一次相続で配偶者に多くの財産を引き継いでしまうと、二次相続の相続税が高くなる場合があります。

 

例えば、上記の例で二次相続があった場合を考えてみましょう。

 

例)一次相続の被相続人だった配偶者(母)が亡くなり、子がその財産を引き継いだ。

母には、引き継いだ財産以外に1億円の財産があった。

 

①一次相続で、相続財産を法定相続分で分けた場合

この場合の母の財産等は次のとおりです。

 

  • 相続財産…一次相続で引き継いだ財産6,400万円+固有の財産1億円=1億6,400万円
  • 基礎控除額…3,000万円+600万円×1人=3,600万円
  • 差引金額…1億6,400万円-3,600万円=1億2,800万円

 

基礎控除後の課税財産1億2,800万円に対する税率は、「40%-控除額1,700万円」です。そのため、納付する相続税は次のようになります。

 

相続税額=1億2,800万円×40%-控除額1,700万円=3,420万円

 

一次相続と二次相続を合わせた相続税の納付額は、一次相続1,220万円+二次相続3,420万円=4,640万円です。

 

②一次相続で、母が相続財産のすべてを引き継いだ場合

この場合の母の財産等は次のとおりです。

 

  • 相続財産…一次相続で引き継いだ財産1億2,800万円+固有の財産1億円=2億2,800万円
  • 基礎控除額…3,000万円+600万円×1人=3,600万円
  • 差引金額…2億2,800万円-3,600万円=1億9,200万円

 

基礎控除後の課税財産1億9,200万円に対する税率は、「40%-控除額1,700万円」です。そのため納付する相続税は次のようになります。

 

相続税額=1億9,200万円×40%-控除額1,700万円=5,980万円

 

一次相続と二次相続を合わせた相続税の納付額は、一次相続0円+二次相続5,980万円=5,980万円です。

 

今回のケースでは、一次相続だけをみると、母が相続財産のすべてを引き継いだほうが、相続税がかからないため、節税となりますが、二次相続で子が払う相続税のことまで考えると、一次相続で相続税を支払っていた方が安くなります。

このようなことがあるため、配偶者の税額軽減(配偶者控除)を受ける場合は、必ず二次相続のことまで考える必要があります。

 

まとめ

配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、納税者にとってとても有利な制度です。

配偶者が引き継ぐ相続財産が1億6,000万円以下、または民法上の法定相続分以内の場合は、配偶者の支払う相続税がかかりません。

 

しかし、適用要件があったり、二次相続のことまで考える必要があったりするなど注意点もあります。

最も有利な申告をするためにも、配偶者の税額軽減(配偶者控除)の適用を考える場合は、弁護士など専門家に相談をしましょう。

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