農地を相続したら?手続きや登記方法などを徹底解説

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農地を相続したら?手続きや登記方法などを徹底解説

2017.12.1

カテゴリ : 相続手続き

農地を相続したら?手続きや登記方法などを徹底解説

両親や配偶者などの親族が亡くなったら、その親族が所有している財産はすべて相続人が引き継ぐことになります。

 

引き継ぐ財産の中には、現金や預金、自宅などは当然のこと、もしも農地を持っている場合はこれも含まれます。

 

しかし、農地の相続は他の財産の相続とは異なる点も多くあります。

今回は農地を相続した場合の手続きや注意点について、徹底解説します。

 

1.農地とは?相続以外の名義変更には許可が必要

まず、農地と普通の土地との違いから見ていきましょう。

日本では、国内の食料自給率の確保や国民に対する食料の安定供給の確保など、さまざまな理由により、農地の取り扱いを「農地法」という法律で定めています。

 

この農地法により、農地は簡単に売買ができなかったり、宅地など他の用途への変更を制限したりしています。

これは名義変更も同じです。

 

農地の名義を変更するためには、農地法第3条に基づき農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。

こうした手続きによって、名義変更に制限がかけられているのです。

 

では、相続の場合はどうなるのでしょうか。

法定相続人が農地を相続する場合は、通常の売買とは異なり、農地保護の視点に立つ意味合いも低いことから、名義変更について許可は不要となっています。

 

しかし、農地を相続して名義が変更になることを農業委員会に知らせる必要はあるため、相続開始から10か月以内に農業委員会に届出を提出する必要があります。

 

なお、法定相続人以外に遺言書で農地を指定して遺贈される場合(特定遺贈)は、農地法第3条に基づく許可申請が必要なため注意しましょう。

 

2.相続財産に農地がある場合の流れ

ここからは相続財産に農地がある場合の流れを、具体的に見ていきましょう。

 

(1)農業委員会へ届出書の提出

農地を相続したら、相続開始から10か月以内に、その農地が所属している農業委員会へ届出書の提出が必要です。

 

届出書の用紙は農業委員の窓口で入手することができます。

届出書の用紙には取得者の住所・氏名や土地の所在などの必要事項を記載する必要があります。

 

具体的には以下のような記載箇所があります。

 

  • 権利を取得した者の氏名・住所
  • 届出に係わる土地の所在等(所在・地番、地目(登記簿・現況)、面積、備考)
  • 権利を取得した日
  • 権利を取得した事由
  • 取得した権利の種類及び内容
  • 農業委員会によるあっせん等の希望の有無

 

※届出に係わる土地の所在等に記載する事項は、登記事項証明書のとおり記載する必要があるため、あらかじめ用意しておきましょう。

 

(2)相続税の申告と納税

一般的に、農地だけを相続することはあまりありません。

他の相続財産と合わせて相続税の申告をし、納税しなければなりません。

 

相続税の申告と納付の期限は、相続があったことを知った日の翌日から10か月以内と定められています。

 

農地の相続だけを考えると、まず農地の評価をして評価額を出す必要があります。

農地の評価は宅地などの一般の評価とは異なります。

評価の仕方が不明な場合は、専門家等に相談しましょう。

 

相続税の評価では、農地は純農地・中間農地・市街地農地・市街地周辺農地の4つに分かれます。

簡単にいうと、純農地と中間農地は固定資産評価額に決められた倍率を掛けて計算します。

 

市街地農地は、その土地が宅地であると仮定した場合の評価額から国税局長が定める造成費の金額を控除した価格です。

市街地周辺農地は、市街地農地の80%に当たる価格です。

 

農地の評価額がでたら相続税を計算して申告・納税というのが、大まかな流れになります。

 

(3)相続登記

農地を相続したら、農業委員会へ届出書の提出や相続税の申告と納税以外に、相続登記を行う必要があります。

相続登記とは登記上の所有者を自分に変更する登記のことで、法務局で手続きを行います。

 

必要書類は以下の通りです。

 

  • 遺産分割協議書
  • 相続登記申請書
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員の住民票(マイナンバーの記載のないもの)
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 不動産の全部事項証明書(法務局で取得)
  • 遺言書がある場合は遺言書

 

また登記にかかる費用は以下の通りです。

 

  • 登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)
  • 登記事項証明書 1通につき600円
  • 戸籍謄本発行手数料 数千円程度
  • 郵送代や交通費などその他の経費

 

3.農地等の相続税の納税猶予の特例

農地等の相続税の納税猶予の特例とは、相続人が農地等を相続した場合で、農業経営を続けるなどの一定の要件のもと、一定金額の相続税を猶予し、最終的には原則免除するという特例です。

 

これは、相続による農地の細分化の防止や農業後継者の育成を税制面から支援することを目的に設けられた特例です。

 

(1)農地等の相続税の納税猶予の特例の概要

相続等で農地等を取得し、かつその農地等を引き続き農業用として使う場合は、本来支払わなければならない相続税の金額から農業投資価格を超える部分の金額を猶予し、相続人が死んだ場合等に猶予額が免除される制度です。

 

農業投資価格は、都道府県ごとに国税局長が決めた価格で、以下の国税庁ホームページから該当する都道府県を選んで確認することができます。

財産評価基準書|国税庁

 

(2)特例を受けるための要件

特例を受けるための要件は多岐にわたります。

今回はわかりやすいように、その中でも代表的なものをご紹介します。

特例の適用を考えている場合は必ず専門家にご相談ください。

 

  • 被相続人と相続人の主な要件

死亡の日まで農業を営んでいた被相続人から農地等の相続を受けた相続人が、相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業を行うこと。

 

  • 対象となる農地の要件

被相続人が農業用に使っていた農地等で、かつ相続税の申告期限までに遺産分割されること。

また相続税の期限内申告書にこの特例を受けるという記載があること。

 

(3)猶予期限

相続税は以下の期日まで猶予され、その後免除されます。

  • 特例の適用を受けた農業相続人が死亡したとき
  • 特例の適用を受けた農業相続人が、相続税申告書の提出期限から農業を20年間継続した日

 

ただし、猶予期限の前に農業を営まなくなった場合や、農地等を転用または売却等した場合は、猶予された相続税の全部または一部を支払う必要があるので注意が必要です。

 

(4)特例を受けるための手続き

特例を受けるには、相続税の申告書に所定の事項を記載し、申告期限内に申告します。

相続税の申告書には、農業委員会が発行する相続税納税猶予適格者証明書などの添付書類が必要です。

 

また、猶予税額と利子税の額に見合う担保を提供することも必要となります。

 

(5)納税猶予期間継続の手続き

納税猶予期間中は、3年ごとに税務署に継続届出書を提出する必要があります。

継続届出書には農業委員会の証明書などの添付書類が必要です。

 

4.相続した農地を売却する場合

ここまでは、相続した農地を所有し引き続き農業を続ける場合を見てきました。

ここからは、その農地を売却する場合の手続きについて確認しましょう。

 

農地を売却できる方法には、農地として売却する方法と農地以外に転用して売却する方法があります。それぞれについて見ていきましょう。

 

(1)農地として売却する方法

農地は農地法で売買を制限されていますが、その中でも売却しやすい方法が農地として売却する方法です。

つまり購入した人も農家で、その農地で農業を続けていくことになります。

 

農地を売却するためには、農地法第3条に基づき農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。

農地を農地として売却する場合は「売却(所有権移転)許可申請」を行いますが、許可には時間がかかるため、売却の手続き進めておく必要があります。

 

売却の流れは以下のとおりです。

 

  1. 許可を条件とした(不許可の場合は契約を解除できる項目を記載した)売買契約を結ぶ
  2. 農業委員会または都道府県知事に許可申請
  3. 許可が下りる前に所有権移転請求権仮登記
  4. 許可が下りた後、所有権移転登記

 

売買契約がない(買い手がいない)とそもそも許可申請を出す必要がないので、まずは許可を前提とした売買契約を結んでから、許可申請します。その後、仮登記をして許可が下りたら本登記となります。

 

(2)農地以外に転用して売却する方法

農地を宅地などの農地以外に転用して売却する方法もあります。

 

ただし、そこにはかなり厳しい条件をクリアする必要があります。

転用が許可される基準には「立地基準」と「一般基準」の2つがあります。

 

①立地基準

農地の区分で許可するかどうかを決める基準です。

この基準の場合は5つの農地区分のうち、第2種農地と第3種農地以外は許可されません。

 

農地が所属ずる農業委員会でどの区分か確認できるので、第2種農地と第3種農地以外であるならば、一般基準がクリアできるかどうかを考えます。

 

②一般基準

一般基準は、農地を転用した後、きちんと使われていくなら転用を許可するというものです。

 

そのため、転用後の事業をするための資金力や、その事業と土地の面積の整合性があるか、転用後速やかにその目的の事業に供するかなど、多くの事柄を確認されます。

 

農地を転用して売却するためには、農地法第5条に基づき農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。

農地を転用して売却する場合は「転用許可申請」を行いますが、許可には数か月かかることもあるため、売却の手続き進めておく必要があります。転用許可申請は、売主と買主の両方が申請者になります。

 

売却の流れは以下のとおりです。

 

  1. 許可を条件とした(不許可の場合は契約を解除できる項目を記載した)売買契約を結ぶ
  2. 農業委員会または都道府県知事に許可申請
  3. 許可が下りる前に所有権移転請求権仮登記
  4. 許可が下りた後、所有権移転登記

 

農地を売却すると、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間で所得税の確定申告を行い、譲渡所得税を納付する必要があります。

 

まとめ

農地の相続には許可や届出など、他の土地にはない複雑な手続きが必要になります。

農地等の相続税の納税猶予の特例を受けるための手続きを忘れると、大きな税金を支払うことになりかねません。

 

また、その後売却する場合の手続きも煩雑です。

相続財産に農地がある場合や事前にわかっている場合には、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談をしたほうが良いでしょう。

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