相続人を不幸にしないための作って安心「財産目録」完全ガイド

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相続人を不幸にしないための作って安心「財産目録」完全ガイド

2017.10.16

カテゴリ : 相続人 / 相続財産

相続人を不幸にしないための作って安心「財産目録」完全ガイド

相続時には被相続人(亡くなった方)の財産の内容を把握する必要があります。

財産の内容がわからないとその引き継ぎもできませんし、相続税の金額も計算できないからです。

 

そのためにつくるのが財産目録です。

 

民法上は、相続時に作成することになっていますが、被相続人の財産のことをいちばんよくわかっているのは被相続人自身です。

 

被相続人が亡くなった後に一から財産目録をつくるのは大変手間も時間も掛かります。

その点では、被相続人が生前に財産目録をつくっておくのがいちばん楽です。

 

また、財産目録をつくらずに被相続人が亡くなると、残された遺族には様々なトラブルが降りかかることがあります。

 

本記事では、どんなトラブルが予想されるのかを紹介し、どのように財産目録をつくっていけばよいかを説明します。

 

1.相続財産の財産目録とは

財産目録とは、ある時点で所有していた財産のリストのことです。

 

法人の財産目録や個人の財産目録があります。

例えば、所有の不動産や有価証券、預貯金、自家用車など、財産の種類とその価額です。

 

相続財産の財産目録は、被相続人(亡くなった方)が相続時に所有していた財産のリストのことであり、財産目録をつくるのは被相続人の財産を漏れないように把握するためのです。

 

被相続人の財産がどのようなものかがわからないと相続の手続きができませんし、いろいろなトラブルが発生します。

 

民法1011条には「遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない」という規定があります。

 

この規定からすると、相続財産の財産目録を作成するのは「遺言執行者」なる人物(これについては後程説明します)で、それ以外は関係ないようにも思えます。

 

しかし、被相続人の財産は相続人(財産を引き継ぐ人)全員に関係があります。

また、相続人の幸不幸を左右しかねません。

 

相続財産の把握というのは、相続人にとって非常に重要な問題です。

被相続人の財産のことをいちばんよくわかっているのは被相続人自身ですし、被相続人が生前に財産目録をつくっておくのがみんなのためになると言えます。

 

2.財産目録がない場合に発生する悲劇例

それでは財産目録を作成していない場合に、どのような不具合があるのか見てみましょう。

 

(1)【ケース1】負の遺産に気がつかなった

①事例

Aさん一家は、Aさんと奥さんのBさんが働き子供がいる共働き家庭です。

 

ある日、働き盛りのAさんが病気で亡くなってしまいました。

健康そうに見えたのに心筋梗塞による突然の死です。

 

会社でのストレスもあったのでしょう。

哀しみにくれるBさん。

もっとも、少ないながらも銀行預金もありましたし、住宅ローンもありません。

 

Bさんと子供は預金を引き継ぐ手続きをし、葬式も済ませました。

 

ところが、4か月後、Aさんの債権者だという人物Xが現れました。

借用書にもAさんの実印が確かに押されていました。

 

そればかりか、AさんはFという友人の連帯保証人にもなっており、その債権者であるYという会社からも取り立てにやってきました。

 

実はAさんは親の介護でもともと借金があったのです。

Aさんの親は数年前に亡くなっていましたが、Aさんは一人で借金をこつこつ返していたようです。

 

さらに面倒見の良いAさんは友人Fの借金の連帯保証人になっていましたが、Aさんの葬式にも現れたFはその後どこかへ消えてしまったという話でした。

 

Bさんは「そんなの聞いていないし、Aさん個人の借金だし、ましてや、葬式で会っただけのFの借金をなんで私が払わなければいけないの?」と言ったものの、XもYも、借金も連帯保証債務もBさんが相続しているんだと主張します。

 

法律のことを多少知っているBさんの友人も、相続放棄の手続き期間はもう過ぎているからBさんは借金を払わなければいけないと言います。

 

Bさんはあまりにも高額な借金地獄に陥り途方に暮れています。

 

②財産目録の視点からみた注意点

被相続人が財産目録をつくっておかないことによる悲劇のひとつは、このケースのように相続人が負の遺産に気がつかない点です。

 

遺産相続は、相続があったことを知った日から3ヵ月以内に相続放棄または限定承認をしないと、基本的には、単純承認、つまり、すべてを受け継ぐとして扱われてしまいます。

この期間内でも、被相続人の財産を使ったりすると単純承認したと見なされてしまいます。

 

単純承認の場合、プラスの財産だけでなくマイナスの財産、つまり、借金も相続することになります。

 

これは、被相続人に借金があることを相続人が知らなかった場合でも同じです。

 

誰でも借金のことは他人には言いたくないものです。

特に家族にはできれば内緒にしておきたいという心理があると思います。

働き盛りであれば借金を黙っていても自分が返せば大丈夫だしと思いがちです。

 

しかし、人間いつ死ぬかもしれません。

その時に大きな借金を遺族に残す結果になっては非常に不幸です。

相続人ももちろん被相続人本人にとっても不本意でしょう。

 

もちろん、財産は常に増減するものですので、相続時の財産目録を生前に、正確につくることは現実には困難です。

 

でも、完璧なものをつくる必要はありませんが、生前から財産目録をつくっておくことが重要です。

 

特に資産が多くなくても、主要なプラスの財産とマイナスの財産を記載しておくことは現在の自分の資産状況を把握する上でも意味があります。

 

通常、マイナスの財産というと借金に限定して考えがちですが、保証債務も記載しておくのが良いでしょう。

 

なお、上の事例でもBさんに救いの道がないわけではありません。

こうしたケースでは法律に多少詳しい友人ではなく、弁護士に相談することを強くおすすめします。

 

(2)【ケース2】正の遺産でもこんなはずでは(税金の追徴課税などのトラブル)

①事例

父親と2人で暮らしていたCさんは最近、父親が亡くなって相続で家を引き継ぎました。

幸い相続税もほとんど掛かりませんでした。

ところがその後、父親が他にも財産を持っていることがわかりました。

 

これはラッキーと思っていたのですが、その財産の分まで合算するとかなりの相続税を払わなければなりません。

最初からわかっていたらきちんと相続税を払うつもりでしたが、税務署もわからないいだろうから黙ってそのままにしておこうと思ったCさん。

 

ところがある日、税務署から税務調査に行くという電話がありました。

法律のことを多少知っている友人に訊いたら「そんなのバレるに決まっているし、相当な追徴課税をされるんじゃないか?」と言われました。

Cさんは心配で心配でたまりません。

 

②財産目録の視点からみた注意点

被相続人が財産目録をつくっておかないことによる悲劇のひとつは、このケースのように相続人が正の遺産を完全に把握できない点です。

 

財産目録をつくったからと言って節税できるわけではありませんが、相続人に無用な混乱を招く心配が減ります。

 

また、生前から相続財産を把握していれば合法的な節税対策を取ることも可能です。

 

(3)【ケース3】骨肉の争い(相続財産の分割をめぐる争い)

①事例

Gさんは最近、資産家の母親を亡くしました。

父親は既に亡くなっていたので、相続人は兄のD、姉のEだけです。

 

兄のDが遺言執行者というものになり、遺産分割の協議が始まりましたが、「財産は実家の家と土地、現金は200万、株券はなし」などと口頭で説明するだけ。

そもそも現金が200万円しかないというのがGさんには信じられません。

 

Gさんが姉のEさんに相談すると「そうだよ。Dは絶対勝手に使っているよ」と意見が一致しました。

 

でも、その後しばらくして、一緒にDに言おうと言ってもなぜかEさんにもはぐらかされます。

 

Gさんは仲が良かったDもEも信じられなくなりました。

 

③財産目録の視点からみた注意点

被相続人が財産目録をつくっておかないことによる悲劇のひとつは、このケースのように相続人の遺産争いを引き起こしかねない点です。

 

遺言執行者とは、文字通り、遺言の内容を現実にする人です。

 

遺言執行者は成人であれば原則的には誰でもなれます。

遺言での指定等で定められますが、必ず必要なわけではありません。

 

上の事例では、兄のDが遺言執行者となっていますが、遺言執行者が指定されておらず、事実上、長男が相続財産を管理している場合もあるでしょう。

 

遺言執行者が指定されていて、誠実にその義務を履行すれば問題ありませんが、遺言執行者自身も相続人だと結局自分の利益を優先しがちです。

 

仮に誠実に取り組んでも疑心暗鬼を生んだり様々なトラブルが起きる可能性があります。

ましてや、相続人の一人が相続財産を事実上管理しているような場合はトラブルが起こりがちです。

 

実際、家庭裁判所に遺産分割審判が請求されるケースの7割以上は5千万円以下の遺産分割です。

つまり、少額だからと言って争いにならないわけではないのです。

 

こうした点では、ある程度の財産のある方であれば、財産目録をつくっておくことがまず重要です。

 

そうすれば、取り敢えず、誰か(例えば、長男や長女)が財産隠しをしているという疑念はなくなります。

 

また、遺言執行者に弁護士等を指定しておくと便利だと言えます。

 

3.財産目録作成の方法と注意点

財産目録は何をどの程度記載すればいいのでしょうか。

被相続人が作成する場合は、相続時には価格も変わっているでしょうから、価格の正確さというよりは、項目として正負の財産をきちんと挙げておくことが大事です。

 

書き方は特に法律では定められていません。基本的には

  • 現金と預貯金
  • 株式などの有価証券
  • 貸付などの債権
  • 動産
  • 不動産
  • 借金など負の遺産

等の項目に分けます。

 

例えば、預貯金であれば、銀行名、支店名、口座番号、金額を記載します。

 

預貯金の項目を建て

銀行名 支店名 種類 口座番号 金額
○○銀行 ××支店 普通/当座 abcdefg yyyyyy円
△△銀行 ××支店 普通/当座 pqrstuv zzzzzz円

のような表にすればよいのです。

 

株式や不動産も同様です。

 

財産は常に変わって行きますから、将来、被相続人となるべき人が作成する場合は、一度つくって終わりではなく、時々更新するのが良いでしょう。

 

例えば、毎年、誕生日付近で作成するとか、何かの記念日に作成するとかも良いでしょう。

 

なお、不動産は価格評価方法がいろいろあり、なかなか難しいものがあります。

金額まで記載するのであれば専門家に作成を依頼するのが無難でしょう。

 

相続財産の中でも不動産の有無や所在は、相続人には把握しにくいものです(相続時にが分からない場合、市町村であれば名寄帳というものを利用することもできます)。

 

被相続人になるべき人が生前につくる財産目録では、どこにどれほどのどういう不動産があるかを記載すれば十分です。

 

動産は財産的価値のあるものに限定して構いません。

逆に、一見無価値な動産でも財産的価値のあるものは財産目録に記載しておくと安心です。

 

4.必要書類

特に必要書類の定めはありませんが、揃えておくと良い必要書類としては、不動産であれば登記関係の書類、賃借であればその証書等の原本または謄本等があります。

 

まとめ

財産目録はご自分でも作成できますが、複雑で手間がかかることもあります。

 

また、財産目録を個人でつくった場合、それをどこに保管するかは問題です。

全くわからない場所ですとそもそも相続時に発見してもらえません。

と言って容易に見つかる場所では、死ぬまでは秘密にしておきたいことが、相続人にわかってしまい、いろいろ問題があります。

 

貸金庫に保管するとか、パソコンやクラウドに暗号ファイルにして保管するとかの方法もありますが、これも、貸金庫の存在や暗号をどう伝えるのかが難しいところです。

 

そうした点では、信頼できる第三者に預けるなど、人を介して保管するのが良いでしょう。

 

不安な場合は遺言執行者の指定も含めて、弁護士に相談することをおすすめします。

 

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