直系尊属とは何か?父母や祖父母など前の世代への相続方法を解説

遺産相続相談窓口 HOME > 遺産相続コラム > > 直系尊属とは何か?父母や祖父母など前の世代への相続方法を解説

直系尊属とは何か?父母や祖父母など前の世代への相続方法を解説

2017.11.10

カテゴリ : 相続人 / 相続財産

直系尊属とは何か?父母や祖父母など前の世代への相続方法を解説

亡くなられた方に子や孫など直系卑属がいない場合は、父母や祖父母といった直系尊属が相続人となります。

 

近年では、生涯未婚率の上昇から、父母などの直系尊属が相続人となるケースが増えています。

 

直系尊属が相続人となる場合、とくに注意したいのが判断能力の有無です。

 

判断能力が低下している場合は、単独で遺産分割協議を行うことができないため、相続手続きとは別に後見人の選任が必要となり、通常の手続きに比べはるかに複雑になります。

 

今回は、直系尊属とは何か、どういった場合に直系尊属が相続人になるか具体例を織り交ぜながら、相続における直系尊属の役割と、また直系尊属が相続人になる場合の相続手続きにおける注意点を中心に解説します。

 

1. 直系尊属とは

父祖から子孫へと垂直につながる血族を直系血族といい、そのうち、自分よりも前の世代に属する者を「直系尊属」、自分よりも後の世代に属する者を「直系卑属」といいます。

つまり、直系尊属とは、父母、祖父母、曾祖父母などのことです。

 

 

2. 直系尊属の相続順位と相続分

誰が、どれだけ相続するかは民法に規定されており、遺言書がない場合は、原則として民法の規定に従い遺産分割が行われることになります。

 

また、民法は、相続人の範囲だけでなく、相続権を優先的に取得する順序も定めており、

直系尊属は、子等の直系卑属に次ぎ第2順位で相続人になるとされています。

 

そのため、第1順位の子などの直系卑属がいる場合は、第2順位の父母などの直系尊属が相続人となることはありません。

 

さらに、直系尊属の間でも優先順位があり、親等の近い者から相続人となるため、例えば父母と祖父母が健在であれば父母だけが相続人となり、祖父母は相続人とはなりません。

 

具体例でみていきましょう。

 

(1)配偶者と子、父母がいる場合

 

第1順位の子がいる場合は、父母などの直系尊属は相続人とはなりません。

したがって、本ケースでは、配偶者と子が相続人となり、その相続分は配偶者1/2、子それぞれが1/4ずつを相続することになります。

 

(2)配偶者と父母がいる場合

 

配偶者は常に相続人となるため、本ケースでは配偶者と父母が相続人となります。

相続分は配偶者が2/3、父母が1/3を按分するため、各1/6ずつとなります。

 

(3)父母と兄弟姉妹がいる場合

 

本ケースでは、先順位(第2順位)の父母が健在であるため、第3順位の兄弟姉妹は相続人にはなりません。

したがって父母が相続人となり、遺産の全てを父母で按分するため、各相続分は1/2ずつとなります。

 

(4)父と祖母が健在の場合

 

直系尊属は、被相続人と親等が近い者から相続人となるため、本ケースでも父が相続人として全ての遺産を承継し、祖母は相続人とはなりません。

 

(5)被相続人が養子の場合

 

被相続人が養子の場合、実親との関係も存続するため、養親に加え、実親も相続人となります。

 

したがって本ケースの場合は、配偶者と、養親、実親が相続人となります。

相続分は配偶者が遺産の2/3を相続し、残りの1/3を養親・実親の頭数で按分した1/12ずつを養親・実親それぞれが相続することになります。

 

なお、特別養子の場合は、実親との親族関係は断ち切られますので、この場合は養親のみが相続人となります。

 

※特別養子:実親からの虐待や悪意の遺棄など子の利益を著しく害する事由があり、実親が養子にだすことをどうした場合に限り、家庭裁判所の審判により認められる養子制度です。

 

特別養子となることができるのは原則として6歳までとされています。

特別養子となった場合は、戸籍上養親の子となり、実親との親族関係は断絶されます。

 

3. 直系尊属を相続人にする手続き方法と流れ

直系尊属が相続人となる場合、特に注意が必要なことは、判断能力の有無です。

 

認知症などで判断能力が低下している場合は、成年後見人などの代理人を選任する必要があります。

 

後見人等を選任せずに、遺産分割協議をした場合は、無効となりますので注意してください。

 

ここでは、直系尊属が認知症を発症している場合の相続手続きについてご説明します。

 

(1)後見の種類

後見には、判断能力の程度に応じて、①後見、②保佐、③補助の3つの制度があります。

 

後見の種類

判断能力の程度

後見

釣銭の計算ができないなど日常の買い物も誰かの援助が必要な人

(ほとんど判断能力を欠いている人)

保佐

日常の買い物はできるが、不動産の売買などは一人ですることができない人

(判断能力が衰えている人)

補助

不動産の売買も一人ですることができるかもしれないが不安な部分もあり、誰かの援助があった方がいいと思われる人

(判断能力に不安がある人)

 

いずれの場合も、本人が単独で遺産分割協議を行うことはできないため、判断能力の程度に応じて後見人、保佐人、補助人の選任を家庭裁判所へ申立てる必要があります。

 

なお、判断能力がある程度残っている保佐や補助の場合は、選任申立とは別に、代理権もしくは同意権を付与する旨の審判を受ける必要があります。

 

後見の種類

遺産分割協議

後見

後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加する。

保佐

本人が遺産分割協議に参加するには、保佐人または補助人の同意が必要となる。

一方、保佐人又は補助人が遺産分割協議に参加する場合は、代理権が必要となる。

補助

 

(2)後見人選任の申立

ここでは、後見人の選任申立の手続きについて説明します。

 

本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ、後見開始の審判を申立てて、後見人を選任してもらうことになります。

 

申立てをすることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、および市区町村長です。

 

申立てに必要な書類としては下記のものがあります。

 

  • 後見開始の申立書

裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

後見開始申立書

記載例はこちらを参照してください。

記入例 遺産分割の協議をする場合

 

  • 本人以外が申立をする場合は申立書付票

裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

申立書付票(本人以外の申立用)

 

本人に関するもの

  • 戸籍謄本
  • 戸籍の附票または本籍地の記載のある住民票
  • 後見登記されていないことの証明書

全国の法務局または地方法務局の本局で取得することができます。

郵送により交付を請求する場合は、東京法務局の後見登録課のみの取り扱いとなっています。

詳しくは東京法務局のホームページを参照してください。

登記されていないことの証明書の説明及び請求方法

 

  • 診断書

裁判所のホームページより診断書の書式をダウンロード(裁判所|成年後見制度)して、かかりつけの医師等に依頼して記入してもらいます。

 

ただ、医師によっては診断書を作成するのを嫌がる方もおられます。

その場合には、裁判所で鑑定してもらうこともできますが、鑑定費用として5〜10万円程度が必要となります。

 

  • 本人の財産目録
  • 収支予定表
  • 相続財産目録など

家庭裁判所によっては後見の申立に必要な書類一式を配布している場合があります。

事前に、家庭裁判所に問い合わせてみるとよいでしょう。

 

後見人候補者に関するもの

  • 戸籍謄本
  • 戸籍の附票または本籍地の記載のある住民票
  • 運転免許証などの身分証明書など

 

申立てにかかる費用は

  • 収入印紙800円(選択した申立内容によって異なります)
  • 収入印紙2600円(登記費用として)
  • 切手代として3000円〜5000円程度

 

この他、鑑定が必要な場合は5万〜10万円程度が必要となります。

また、後見人の報酬として、月2万円〜が必要となります(本人の財産状況により異なります)。

 

(3)後見人候補者

後見人には、成人されていれば親族の方がなることもできますが、本人の大切な財産を管理し、定期的に後見監督人や家庭裁判所へ収支状況などを報告することが義務づけられているため、負担が大きなものとなります。

 

また相続手続きを行う必要性から後見人の選任申立を行う場合、同じ相続人が後見人になってしまうと、後見人と本人(被後見人)との間で利害が対立するため、別途特別代理人の選任の申立も必要となり、後見人の選任を申立てた意義が失われてしまいます。

 

そのため、親族よりも、弁護士などの専門職を後見人候補者に立てて、申立を行うことをお勧めします。

 

(4)後見人が選任されたら

家庭裁判所での調査や鑑定を経て、後見人が選任されれば、その選任された後見人を交えて遺産分割協議を行うことになります。

 

まとめ

相続人となるべき父母などの直系尊属が認知症などで判断能力が低下している場合は、相続手続きと並行して、成年後見人等の選任申立てが必要となり、手続きが複雑になりがちです。

 

また、後見人としては親族よりも弁護士などの専門職が推奨されていることからも、弁護士に依頼すれば、後見開始の申立だけでなく相続手続きやその後の後見業務もすべてお任せできるので時間や手間を大幅に省くことができます。

一度相談してみるとよいでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

〈 関連記事 〉

遺産相続コラム一覧へもどる
掲載をご検討の専門家の方へ