生前整理とは何か?相続人の間でトラブルを未然に防ぐ為に今やるべきことを解説

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生前整理とは何か?相続人の間でトラブルを未然に防ぐ為に今やるべきことを解説

2017.10.24

カテゴリ : 生前贈与

生前整理とは何か?相続人の間でトラブルを未然に防ぐ為に今やるべきことを解説

生まれ落ちたからには、いつかはこの世を去ることとなります。

そのときを迎えて初めて人間関係や財産の処遇につき頭を悩ませることになっては大変ですし、冷静な判断も難しくなるでしょう。

 

特に財産関係は相続問題とも絡むため、処分の仕方を指定することなく亡くなった場合、相続人間のトラブルを招く可能性もあります。

 

そこで注目されているのが、生前整理。年齢にかかわらず、自らの遺すものを予め整理しておくことは重要です。

 

今回は、そうした生前整理の必要性や具体的な方法について解説していきます。

 

1.生前整理とは何か

生前整理というのは、本人が存命のうちに、身の回りの関係性や財産について取りまとめておくことです。

本人のためのみならず、後に遺される者たちのためにも行われます。

 

(1)遺品整理との違い

生前整理と似たものとして、遺品整理があります。

両者の違いは、以下の通りです。

 

①生前整理

  • 主体 → 本人や家族
  • 目的 → 相続トラブルを未然に防いだり、本人の意思に沿って財産を処分したりする
  • 手段 → 整理や処分、遺言書の作成など
  • 特徴 → 名義変更やその物の価値に沿った処分などが容易

 

②遺品整理

  • 主体 → 遺族
  • 目的 → 相続財産の整理や処分、形見分け
  • 手段 → 整理や処分、遺言書の実行など
  • 特徴 → 名義変更等に手間が掛かる、コレクターアイテム等の価値がわかりにくい

 

遺品整理は本人が亡くなった後に行われるものですので、遺言がない限り、本人でなければなし得ないことや知り得ないことが出てくるという問題があります。

 

特に、名義変更については相続や代理に関する証明が必要となることが多く、労力を要します。

 

2.生前整理の必要性

生前整理はどうして行うべきなのか、行わなかった場合に生じる問題点と、行った場合の利点についてみていきましょう。

 

(1)生前整理を行わなければどのような問題が生じるか 

 

①相続トラブル

本人が亡くなってしまえば、相続財産の適切な処分が困難となります。

 

特に複数の相続人が存在する場合、遺言書などがなければ、原則として民法に規定された法定相続分にしたがった形で遺産の分割がなされますが、なかなかスムーズにはいきません。

 

なぜなら、

  • 誰が相続人なのかがわからない場合がある
  • 何が相続財産に当たるのかがわからない場合がある
  • 借金や税金の問題がある
  • 相続財産の価額をどのように評価すべきかが難しい場合がある
  • 生前贈与、遺贈、遺留分などの問題がある
  • 誰がどれだけの財産を相続すべきかで意見が割れる場合がある

といった諸々の問題が存在するからです。

 

逆に、これらの問題は本人が存命であれば比較的容易に解決できることもあり、生前整理の重要性がわかります。

 

②手続の困難

財産の移転というのは、本人がいれば容易ですが、いなければ途端に難しいものとなります。

 

本人が単に不在であった場合でも代理権の有無が問題となることがありますし、亡くなった場合にはさらに手間が掛かります。

 

たとえば銀行口座や車、不動産といったものの名義変更に際しては、遺産分割協議書や相続人全員分の戸籍謄本、印鑑証明書といった書類が必要となることも多く、一筋縄ではいきません。

 

③財産の不適切な処分

隠し口座のように本人だけしか知らない財産や、コレクターアイテムのように同じ趣味を持つ者でなければその価値がわからない財産があり得ます。

 

こういった財産は、本人の指示がなければ、逸失してしまって時効に掛かってしまう、ゴミとして処分されてしまうといったことにもなりかねません。

 

財産に対してもっとも相応しい処分ができるのは、なんといっても本人です。

生前整理を行わなければ、不本意な処分がなされてもやむを得ないでしょう。

 

(2)生前整理を行うことによるメリット

①相続後の手続等の効率化

本人によって財産の整理や処分が一定程度行われていることにより、遺産相続をした後の相続人の負担が減ります。

 

財産目録が用意されていれば、どういう性質の財産がどのくらい存在するのかがわかりますし、債権債務関係が明らかにされていれば、相続放棄などの判断も行いやすくなります。

 

生前整理とは本人だけのためではなく、遺族ないし相続人のためにも行っておくべきものといえます。

 

②相続人同士の争いの回避

相続に関する争いは、骨肉の争いというほど激しいものとなることも多くあります。

 

法定相続分にしたがった遺産分割で対応し切れないのは、たとえば兄弟間で費やされた学費が異なる、相続人のうち特定の者だけがずっと介護を続けていた、事業に関する多額の援助があった、といった具体的な事情が存在するからです。

 

このような事情を汲んだ上で、本人が少しでも納得できるような財産の分け方を遺言として用意しておけば、相続人同士でのトラブルは回避できる可能性が大きくなります。

 

③判断能力や行動能力低下への対応

特に高齢者の場合に問題となるのが、認知症などの判断能力の低下です。

 

こうなると財産のリストアップや整理も困難となりますし、望ましい結果にもならないことが考えられます。

 

また、判断能力はしっかりしていても、怪我や病気で寝たきりになる可能性もあります。

遠方に不動産を所有している場合や、離れたところにお金を貸している相手がいる場合など、財産の整理には行動する能力が必要となることもあるでしょう。

 

生前整理を行っておくことで、こうした判断や行動に関する能力がいつ低下しても安心することができます。

 

④自分の意思を反映させられる

人間関係や財産の清算、処分について自分の意思を反映させられるというのも生前整理の大きなメリットの一つです。

 

趣味仲間にコレクションを贈与しておきたい、連帯保証を解除しておきたい、形見としてもらいたいものを指定しておきたい、といった希望も生前整理によって叶えられます。

 

そうすることによって本人の安心感が手に入るというのも、利点といえるでしょう。

 

⑤相続税対策

生前整理の一環として、生前贈与をしておくという手段があります。

相続財産には相続税が課されるところ、相続財産の総額を減少させておくことで節税対策にもなるのです。

 

具体的には、贈与税の掛からない額が年間で110万円までであり、この範囲内であれば贈与による税金は掛かりません。

 

また、20年以上生活を共にした配偶者に対し、居住用の不動産又はその取得資金として贈与する場合であれば、最高で2000万円まで非課税となるという配偶者控除の制度もあります。

 

他にも、住宅資金や教育資金に関する贈与の非課税制度もあるため、これらを利用することで相続税をかなりのところまで減らすことが可能です。

 

3.生前整理の方法

生前整理の方法には、財産目録の作成、債権債務関係の整理、時効等の確認、財産の処分など様々なものがあります。

 

その中でも、一定の制度や契約として確立されているものが、遺言書の作成と家族信託(民事信託)契約の締結です。

 

(1)遺言書

遺言には、普通方式遺言と特別方式遺言とがあります。

 

このうち特別方式遺言は、疾病や船舶の遭難で死亡の危険が迫っている場合や船に乗っている場合、伝染病で隔離されている場合といった特別な場合にのみ行う遺言です。

 

これに対して、一般的に行われるのが普通方式遺言であり、これには自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの種類があります。

 

①自筆証書遺言

遺言者本人が内容と署名、日付を全て自書した上で押印する遺言です。

手間もお金も掛かりませんが、要件不備などのリスクもあります。

 

②公正証書遺言

本人と証人2名で公証人役場へ赴き、本人の口述した遺言内容を公証人が筆記します。

署名は本人と証人と公証人で行います。

 

証人の日当、公正証書遺言の作成手数料などで2万円~10万円ほど掛かります。

原本の保管が公証人役場において行われるため、管理リスクがありません。

 

③秘密証書遺言

本人が自筆、代筆、ワープロ打ちなどの方法で記載し押印した遺言書を封印した上で、公証人役場へ持参します。

 

証人2名と公証人立会の下、存在の証明をしてもらいます。

秘密証書遺言の作成手数料は定額で、11000円であり、それに証人の日当が加わります。

本人に遺言書は返却されるため、保管は本人が行います。

 

遺言書は不備さえなければ本人の意思を表示するものとして、生前整理としても実効性があります。

 

ただし、万一不備があった場合には無効となってしまうため、専門家の判断を仰ぐことも大事です。

 

(2)家族信託

家族信託(民事信託)とは、信頼できる個人ないし会社へ自己の財産を預け、管理してもらうという契約をいいます。

 

高齢者が認知症などによる判断能力の低下に備えて契約を締結するといった利用がなされるもので、財産管理だけではなく、自己の相続人がさらに相続をする際の相続先の指定や、受贈者の贈与財産の管理といったことも可能です。

 

他にも、子供へ一定額ずつ財産を渡したい、障害を有する子供の財産管理を頼みたい、などの求めにも応じられます。

 

4.生前整理を行う際の注意点

生前整理の内容は多岐にわたりますが、方法によっては注意も必要です。

 

(1)費用・時間

生前整理や遺品整理を代行してくれる業者は、全国に少なくとも数千社はあるといわれています。

 

生前整理には、こういう手順でこれを行う、という定式があるわけではないため、業者に依頼した場合の費用や時間は千差万別です。

 

中には悪徳業者もおり、多額の費用を請求されるという被害も生じています。

何を頼みたいのかを自分の中で整理し、必要なものについて依頼するといいでしょう。

 

遺言作成の費用であれば、弁護士などの専門家に依頼した場合、10万円~20万円ほどが相場となります。

 

弁護士に民事信託として財産の管理を依頼する場合、管理すべき対象の財産総額によって、20万円~200万円ほどが相場となります。

 

(2)本人が行っておくべきこと

生前整理は後のトラブルの回避・予防という面が大きいものですから、それに沿って行うとよいでしょう。

 

本人でなければわからない財産を目録としてリストアップしておくことや、処分の仕方(贈与か相続か)を決めておくこと、相続人全員から同意を得ておくこと、遺言書を作成しておくこと、信頼できる専門家に依頼することなどが大事です。

 

家族が知らない相続人がいる場合(愛人の子供や再婚相手など)や、分けにくい財産(不動産など)がある場合には、相続関連のトラブルが生じやすいものです。

 

そうした事情があるときには、きちんと関係性や財産の整理をしておくと、争いを未然に防ぐことができます。

 

(3)専門家に任せたほうがよい場合

生前整理の中でも、遺言書の作成は有効となる要式が厳格に定まっているため、専門家によるチェックを受けておいたほうがよいものです。

 

せっかくの遺志が無駄にならないためにも、きちんと確認しておきましょう。

 

また、相続財産の対象や財産価値の評価、相続税に関連する事柄についても複雑な仕組みや制度があるので、専門的知識を要する場合があります。

 

こうした場合にも弁護士や税理士などに依頼するのが確実といえます。

 

まとめ

本人が安心し、適切に財産等を処分するためにも、あるいは遺族が相続で争うことのないようにするためにも、生前整理は重要です。

 

遺言書の作成や財産の管理、評価などは判断が難しいものですので、生前整理をしっかりと行いたいのであれば、予め専門家にご相談なさるとよいでしょう。

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