暦年課税制度とは何か?生前に財産を贈与するなら知っておくべき知識

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暦年課税制度とは何か?生前に財産を贈与するなら知っておくべき知識

2018.04.22

カテゴリ : 生前贈与

暦年課税制度とは何か?生前に財産を贈与するなら知っておくべき知識

財産を親族や後継者に引き継ぐ方法には、相続が一般的ですが、生前贈与という方法もあります。生前贈与は、自分が生きているうちに財産を引き継ぐことができるので、相続トラブルを防ぐメリットなどもあります。

 

この生前贈与の基礎となるのが暦年課税制度です。

今回は、生前に財産を贈与するなら知っておくべき知識を徹底解説します。

1.暦年課税制度とは

財産を親族や後継者に引き継ぐ場合には、申告と納税が必要です。相続で財産を引き継ぐ場合は相続税の申告と納税を、生前贈与で財産を引き継ぐ場合は贈与税の申告と納税を行います。

 

生前贈与で税金を課税する方法の中で、最も基本的なものが暦年課税制度です。暦年課税制度とは、1年間を単位とし、それぞれの年度で贈与した金額に対して税金を課す制度のことをいいます。

 

贈与税には、納税者本人に対する年間110万円の基礎控除があります。基礎控除とは、その控除の範囲内の贈与であれば税金をかけない非課税枠のことです。

そのため、1年間で110万円までの贈与を受けても贈与税はかかりません。

では、暦年課税制度を適用した場合の手続きについて見ていきましょう。

 

(1)贈与者(贈与した人)、受贈者(もらった人)

贈与者と受贈者に制限はありません。親族はもちろん第三者にも贈与が可能です。

 

(2)贈与財産

贈与する財産に制限はありません。現預金だけでなく、有価証券や不動産なども贈与できます。

 

(3)課税期間

1月1日~12月31日の間に贈与した財産に贈与税がかかります。

 

(4)基礎控除(非課税枠)

基礎控除(非課税枠)は課税期間ごとに110万円です。つまり、毎年110万円の基礎控除(非課税枠)があります。

 

(5)申告・納付する人

贈与税の申告や納税をする人は、受贈者(もらった人)です。贈与者(贈与した人)でないので注意しましょう。

 

(6)申告・納付期限

贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までです。

納付期限も翌年の3月15日までです。

ただし、贈与した金額が基礎控除(非課税枠)の110万円以内の場合は、申告も納税も不要です。

2.暦年課税制度を使った贈与税の計算

では、実際に暦年課税制度を使った贈与税の計算を見ていきましょう。暦年課税制度を使った場合の贈与税は、次の計算式で計算します。

 

贈与税額=(贈与した金額-基礎控除110万円)×税率

 

贈与税の税率には一般税率と特例税率がありますが、通常は一般税率を使います。

特例税率は、直系尊属(祖父母や父母など)から、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上の者(子・孫など)への贈与の場合のみ使います。それぞれの税率は次のとおりです。

 

【贈与税の速算表】

一般税率

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 1500万円以下 3000万円以下 3000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円


特例税率

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 1500万円以下 3000万円以下 4500万円以下 4500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円


<例①>

18歳の孫が祖父から500万円の現金の贈与を受けた。

 

贈与を受けた者が18歳のため、一般税率を使って計算します。

課税価額=500万円-基礎控除110万円=390万円

基礎控除後の課税価格が390万円のため、上記一般税率の表の400万円以下の税率を使います。

贈与税の金額=390万円×20%-25万円=53万円

 

<例②>

21歳の子が父から800万円の現金の贈与を受けた。

 

贈与を受けた者が21歳、かつ直系尊属(祖父母や父母など)からの贈与のため、特例税率を使って計算します。

課税価額=800万円-基礎控除110万円=690万円

基礎控除後の課税価格が690万円のため、上記特例税率の表の1,000万円以下の税率を使います。

贈与税の金額=690万円×30%-90万円=117万円

 

3.暦年課税制度のメリット

ここまでは、暦年課税制度がどのようなものかを確認してきました。

ここからは、暦年課税制度のメリットを見ていきましょう。

 

(1)相続財産を減らすことができる

暦年課税制度のメリットの1つが、相続財産を減らせることです。

相続時に大きな財産を一度に引き継ぐのではなく、少しずつ財産を贈与することで、相続財産を減らすことができます。

 

相続時の納税額を減らすことができ、大きな納税資金の確保が不要となるほか、早めに財産を引き継ぐことで、その財産を有効活用できるなどのメリットもあります。

 

(2)基礎控除110万円が毎年使える

暦年課税制度の基礎控除110万円は、1年間の控除額で毎年使うことができます。

そのため長い期間をかけて少しずつ贈与していけば、結果的に無税で大きな財産を引き継ぐことが可能です。

 

極端な話、毎年100万円ずつ20年間贈与すれば、合計2,000万円の財産を無税で引き継げます(後述する定期贈与に注意)。

このように基礎控除110万円をうまく使えるメリットがあります。

 

(3)複数の人に贈与しても、それぞれ基礎控除110万円が使える

ここでもう一度、暦年課税制度について整理しましょう。

基礎控除110万円を使えるのは、贈与した側ではなく、あくまで贈与を受けた側の話です。

贈与する側としては、例えば祖父が2人の子供と孫1人の合計3人に贈与した場合は、110万円×3人=330万円までの財産を無税で引き継ぐことができます。

 

上述したとおり、基礎控除110万円は毎年使えるので、贈与を受ける親族が多いほど、大きな節税効果を生むことができます。

 

(4)贈与、相続を通じた節税をすることができる

贈与税と相続税は、それぞれ贈与、相続した財産について税金がかかります。

では、その財産の価値はいつの時点の価値でしょうか。それは、贈与や相続を行った時点の価値です。

 

ということは、その財産の運用などのことを無視して、税金のことだけを考えれば、贈与時と相続時を比較し、価値の低い方で財産を引き継げば、一番税金が安くて済むことになります。

 

例えば、再開発などが行われる予定が決まっている土地などを所有している場合など、将来価値があがることが確実なときは、先に贈与しておくなどの工夫ができます。

このように、贈与、相続を通じた節税をすることができるメリットがあります。

 

4.暦年課税制度の注意点

暦年課税制度を使った贈与には、大きなメリットがあります。

しかし、その分注意点も多くあります。ここでは、暦年課税制度の注意点を確認します。

 

(1)定期贈与とみなされないようにする

暦年課税制度を使う場合で、いちばん注意しないければならないのが、定期贈与とみなされないようにすることです。

定期贈与とは、毎年同じ程度の金額を贈与することで、それをまとめて1つの贈与とみなされることをいいます。

 

例えば、毎年100万円ずつ20年間贈与すれば、合計2,000万円の財産を無税で贈与することになります。

そのあとで税務調査が入り、最初の年に2,000万円の贈与の契約をし、それを毎年分割して支払っているだけと認定されれば、最初の年に遡って2,000万円に対する贈与税を支払う必要がでてきます。

 

これでは節税効果があるどころか、延滞税などよけいな税金まで支払うことになってしまいます。そのため、暦年贈与制度を利用するためには、次のような対策を一緒に行う必要があります。

 

①贈与契約書の作成

贈与者と受贈者の間で、贈与の都度、贈与契約書を作成します。

こうすることで、最初の年に多額の贈与の契約をし、それを毎年分割して支払っているという指摘を受けないようにします。

 

また、贈与契約書には別の効果もあります。

贈与は相続と違い、贈与者と受贈者の両者の合意があって初めて成立します。

どちらか一方の意志だけでは成立しません。

 

そのため、後の相続のときに、相続人同士のトラブルの原因になりかねません。

そこで、贈与者と受贈者の両者の合意があったことを示す証拠として、贈与契約書を残しておきます。

 

②贈与は通帳を通して行う

贈与は無償でお金を譲り渡す行為なので、証拠が残りにくい行為です。特に、現金を手渡しすると証拠は残りません。

 

そこで、贈与があったことを証明するために、通帳を通して贈与を行います。

通帳を通せば、通帳や振込用紙などの証拠を残すことができます。

 

③あえて贈与税の申告をする

あえて毎年110万円を少し超える程度の贈与をして、贈与税の申告や納付を行うことも1つの方法です。毎年の贈与税の申告を否認して、定期贈与に認定することは税務署にとっても手間なため、定期贈与と認定しにくくする狙いがあります。

 

④毎年の贈与額を変える

毎年同じ金額と違う金額の贈与では、違う金額の贈与の方が定期贈与と認定しにくくなります。

 

※上述した方法をとったとしても、確実に定期贈与と認定されないということではありません。その他の状況を含め総合的に判断されます。

 

(2)相続開始前3年以内の贈与に注意

実は、相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続時に相続財産に含めて相続税の計算を行います。これは、本来の贈与ではなく、ある程度相続の時期が分かった段階での、相続税の負担を軽減することを目的とした贈与を防ぐための制度です。

相続開始前3年以内に贈与しても、結局相続財産に含まれるため、その節税効果が薄まるので注意しましょう。

 

(3)その他の特例のことも考える

贈与税には、暦年課税制度のほかに、相続時に精算することを前提に、贈与時に贈与税をかからなくする「相続時精算課税制度」があります。

 

また、特定住宅資金の贈与や教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度といった、特定の目的のための贈与に対し一定の非課税枠を設ける制度などもあります。これらの制度を暦年課税制度の代わりに使用する、もしくは併用することで、より節税効果が生じる場合もあるので、注意が必要です。

 

まとめ

暦年課税制度は、生前贈与の原則ともいえる課税制度です。年間110万円の基礎控除を上手く使えば、節税効果も見込めます。

しかし、定期贈与とみなされないようするなどの多くの注意点や、他の制度を利用した方が得になることもあります。

 

暦年課税制度を利用するのが適正かどうかを判断するためにも、生前贈与を考えている場合は、速やかに弁護士などの専門家に相談しましょう。

 

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