使い込まれた遺産を取り戻す「不当利得返還請求」を徹底解説

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使い込まれた遺産を取り戻す「不当利得返還請求」を徹底解説

2017.10.13

カテゴリ : その他

使い込まれた遺産を取り戻す「不当利得返還請求」を徹底解説

「同居していた兄弟が勝手に故人の預金からお金を引き出しているようだ」、あるいは「数回にわたり預金通帳に使途不明な引き出しがある」など、一部の相続人による預金の使い込みが問題となるケースが増えています。

 

通常、相続が開始すると、亡くなられた方の預金口座は凍結され、以後、相続手続きが正式に行われない限り、相続人であっても引き出すことはできません。

 

ただし、銀行などの金融機関が口座凍結の措置をとるのは、口座名義人が亡くなったことを知ってから。

つまり、金融機関に死亡の事実を知らせない限り、他の相続人によって勝手に引き出される危険性があるわけです。

 

また、相続開始前から、同居親族らによって勝手に預金の引き出しが行われていることも少なくはありません。

 

一部の相続人により勝手に預金が使い込まれていた場合、使い込まれたお金を取り戻すことはできるのでしょうか。

取戻すことができるとしても、どのような手続きを行えばいいのでしょうか。

 

今回は、使い込まれたお金を取り戻す方法として「不当利得返還請求」を紹介します。

1.不当利得返還請求とは

不当利得返還請求とは、正当な理由もないのに他人の財産等によって利益を受け、それによって他人が損害を被った場合に、受け取った利益の返還を請求することです。

過払い金の返還がその典型例として知られています。

 

相続においても、一部の相続人によって亡くなられた方の預金などの遺産が勝手に使い込まれていた場合、使い込んだ金銭は不当利得となるので、その返還を請求することができます。

 

使い込んだ相続人が、素直に返還に応じるようなら、話し合いで解決することも可能ですが、使い込みの事実を認めなかったり、返還を拒否する場合には、裁判所へ訴えを起こして、使い込まれた遺産の返還を請求していくことになります。

 

以下、裁判に先立ち必要な書類や手続きについて説明します。

 

2.不当利得返還請求訴訟を行う前の準備

(1)証拠を集める

裁判上で不当利得返還請求を行う場合、訴える側が、勝手に預金を使い込まれた事実を証明する必要があります。

そのため、裁判の準備段階で、証拠集めをしっかりとしておくことが重要となります。

 

具体的には、①使い込みの事実を証明するための証拠と、②故人の意思に反して預金が引き出されていた事実を証明する証拠を集める必要があります。

 

①使い込みの事実を証明するための証拠

銀行などの金融機関から取引履歴を開示してもらうことで、過去10年分の入出金記録を確認することができます(金融機関によっては、開示される期間が短い場合もあります)。

これを基に使途不明な引き出しはないかを調査していくことになります。

 

この開示請求は、他の相続人の協力がなくても、相続人の一人が単独で行うことができます(平成21年1月22日最高裁判決)。

 

なお、開示に必要な書類や手数料は金融機関ごとに異なりますので、対象となる金融機関に問い合わせてみるとよいでしょう。

 

②故人の意思に反して預金を引き出していた事実を証明する証拠

故人が認知症などを発症し、判断能力が低下していた場合は、故人の意思に反して無断で預金が引き出されていた可能性が高いといえます。

 

また判断能力はあるが、病気やケガ等で外出が困難であったという状態で、引き出されている金額が不当に高額な場合には、無断で引き出されていた可能性があります。

介護記録やカルテ、医師の診断書などを証拠として収集するようにしましょう。

 

(2)内容証明郵便を送る

金融機関から取り寄せた取引履歴に使途不明な出金がある場合でも、故人の生活費や医療費に充てられていた場合は、必要経費として正当な引き出しであったことになります。

 

そこで、まずは預金を引き出した疑いのある方に、その使い道などを尋ねてみるようにしましょう。

 

相手が話し合いに応じない、あるいは話し合いでは納得のいく回答が得られそうにない場合は、内容証明郵便を利用して説明や返還を求めていくことになります。

 

この内容証明郵便は、後日訴訟を提起する際の証拠となりますので、請求の趣旨を明確に記載するようにし、配達証明書付きで郵送するようします。

 

(3)訴状を作成する

①管轄裁判所と訴額

訴状を作成する前に、訴えを起こす裁判所はどこか(管轄裁判所)、請求できる金額(訴額)はいくらかを調べる必要があります。

 

管轄裁判所は、原告の住所地を管轄する裁判所

訴額は引き出された金額に法定相続分を乗じた金額となります。

 

例えば、大阪に住むAが東京に住むBを訴える場合の管轄裁判所は大阪の裁判所になります。

 

相続人がABの2人だけで、Bが故人の預金から500万円を不当に引き出していた場合は、500万円×1/2=250万円が訴額となります。

このケースでは、訴額が140万円を超えているので、管轄裁判所は大阪の地方裁判所になります(140万円以下の場合は簡易裁判所)。

 

②訴状を作成する

訴状を作成するときのポイントは以下の2点です。

 

  1. 被告が被相続人に無断で預金を引き出していたこと、
  2. 被相続人の死亡により、原告が相続人になったこと

 

1の事項については具体的かつ詳述に記載する必要があります。

例えば、使途不明な出金が複数回ある場合は、金融機関名、支店名、引き出し年月日、引き出された金額を列挙し、それを裏付ける金融機関からの取引履歴を証拠として提出します。

 

また、それが被相続人の意思に反して無断で引き出されたことを証明するため、被告による不正出金よりも以前から被相続人が認知症を発症していた等の事実を記載し、それを証明するため医師の診断書や介護記録などを提出するようにします。

 

なお、2については、死亡の記載のある戸籍謄本、および原告が被相続人の相続人であることが確認できる戸籍謄本が証拠資料となります

 

3.不当利得返還請求訴訟

不当利得返還請求訴訟では、被告が「自分は引き出していない」とか「被相続人の生活費に使った」あるいは「引き出しには被相続人の同意があった」などと反論してくることが予想されます。

 

つまり、引き出しの事実自体を否定したり、引き出しの事実は認めても、その引き出しには正当な理由があったと反論しているわけです。

こうした反論にも、適切に対応していく必要があります。

 

被告が引き出しの事実自体を否定している場合は、当時被相続人は認知症により財産の管理をできる状態にはなかったこと、引き出されているATMが被告の勤務先や自宅の近くであったことなどを主張していくことになります。

 

一方、引き出しの事実は認めていても、その引き出しには正当な理由があったと反論してきた場合は、引き出し頻度が多く、被相続人の生活状況から考えて引き出された金額は高額であったとことや、被相続人は認知症を発症していたため同意する能力はなかったことなどを主張することになります。

 

4.不当利得返還請求が認められないケース

例え被告により預金が引き出されていたとしても、引き出し頻度が少なく(月1回や何3回)、金額も10万〜50万円を超えないものであれば、被相続人の生活費や医療費などの必要経費に充てていたと推測されます。

 

このような場合は、不当利得返還請求が認められない可能性があります。

 

5.不当利得返還請求の時効

不当利得返還請求は、10年で時効消滅します。

 

ただし、民法が改正されると、さらに時効期間が短縮され、「権利を行使できることを知ったときから5年」「権利を行使できるときから10年」のいずれか早く到達する期間で時効消滅しますので、請求権の行使は早めに行うようにしましょう。

 

6.相続人による使い込み以外でも、不当利得返還請求を利用する場合

被相続人が平成18年以前から長期的に消費者金融から借り入れをしていた場合、過払い金が発生している可能性があります。

この過払い金の返還請求権は被相続人の死亡により相続人の方が引き継ぐことになります。

 

また、被相続人が詐欺の被害に遭われていた場合も、その詐欺により騙取された金銭の返還を求める権利は相続人が承継します。

そのため、上記の事由がある場合は、不当利得返還請求を行うことになります。

 

7.相続人による使い込みを未然に防ぐ方法

相続人よる預金の使い込みを未然に防止するためには、相続の前後にわたって対策を立てる必要があります。

相続開始前であれば、被相続人が認知症などで判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用して弁護士や司法書士等の専門職に、財産管理を任せるべきでしょう。

 

一方、相続開始後は、すみやかに金融機関に死亡の事実を知らせ、銀行口座を凍結してもらうようにしてください。

 

口座凍結を解除するには、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書の提出が必要となり、一部の相続人が無断で預金を引き出すことはできなくなるからです。

まとめ

不当利得返還請求は訴える側に立証責任があるため、証拠の収集だけでなく主張・立証をどう展開するかなど高度な法的知識が必要となります。

 

間違った判断で進めてしまうと、大きな損失が発生する危険性もあります。

そのため一部の相続人による預金の使い込みが疑われる、あるいは発覚した場合は、弁護士に相談するようにしましょう。

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