遺産分割協議の期限が無期限から10年に?民法改正でどうなる?

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遺産分割協議の期限が無期限から10年に?民法改正でどうなる?

2020.05.1

カテゴリ : 遺産分割

遺産分割協議の期限が無期限から10年に?民法改正でどうなる?

 

遺産に関して、期限が設けられているものは多いです。例えば「相続放棄」や「限定承認」は3ヶ月ですし、「相続税の申告」には10ヶ月という期限が設けられていますが、遺産分割協議には期限が設けられておりませんでした。

 

無期限ということは、100年前の遺産を分割協議してもよいわけですし、ずっと放置していてもよいわけです。ただ、遺産分割協議の期限について10年とする民法の改正案が出ているので現在放置をしている人は、準備を始めるのが良いと言えるでしょう。

 

本記事では、期限が設けられる背景と、やるべきことなどを詳しく解説いたします。

 

 

遺産分割協議の期限が無期限から「10年」になる背景

遺産分割協議について、「10年」と期限を設けられることには、背景があります。

その中で考えられることの1つに、【空地・空き家問題】があります。

 

参考:遺産分割協議の期限10年に、権利確定早く 法務省検討|日経新聞

 

 

これまで遺産分割協議に期限が無かったため、協議を後回しにするケースが多くありました。特に遺産が「土地」や「家」の場合には、空地や空き家を増やすことになり、年月の経過とともに所有者が不明になることも。

 

また、該当の空地や空き家を譲ってほしくても、所有者とコンタクトが取れないので、更に放置されるケースもあります。

 

総務省の平成30年の住宅・土地の統計調査によると、空き家数は848万9千戸と過去最多となっています。

 

他にも下記のような問題が生じています。

 

■空地へのゴミの大量投棄

■雑草などが生え、景観が悪化

■空き家が犯罪に使用され治安が悪化

■老朽化した建物の倒壊

 

こういった状況を改善するために、遺産分割協議の期限が「10年」になる見通しです。

 

 

遺産分割協議の期限「10年」を過ぎるとどうなる?

民法改正で、遺産分割協議の期限が「10年」になる見通しですが、今までは分割協議を行わなくても、特にペナルティーや困ることはありませんでした。

 

今後は10年を過ぎるとどうなるかと疑問に思われる方も多いでしょう。無期限から10年になることにより、ペナルティーはありませんが、下記のようなことが予想されます。

 

 

共有持ち分になる

被相続人が亡くなって10年が経過すると、相続人の法定相続分にのっとり、自動的に遺産分割がされることになります。

 

つまり遺産分割協議をせずに放置していると、遺産がいつの間にか、法定相続分で分割されてしまうということが起こりうるのです。

遺産分割は、必ずしも法定相続分通りに行う必要はありません。

法定相続分によるとAさんの権利が2/1、Bさんの権利が1/4、Cさんの権利が1/4だったとします。

 

しかしこの通りに遺産分割をする必要はなく、BさんCさんも納得すれば、Aさんの権利が1/2、Bさんの権利が2/1としても良いのです。

 

遺産である土地がいつの間にか分割されてしまっていたら、実際の分割分に変更するための手続きが発生し、更に余計な税金も発生してしまいます。

(詳しくは事項「名義変更の際に、手続きや税金が発生する」をご参照ください。)

 

特に遺産が「家」や「土地」などの不動産の場合は、現金のように単純に分けることができません。その為、例えば土地の1/2の所有権がAさんにあり、残りの1/2が誕生日にある等の状態が起こりえます。

これは、土地は相続人AさんとBさんの「共有持ち分」だと言えます。。

 

 

名義変更の際に、手続きや税金が発生する

遺産分割協議をせずに10年が経過すると、前述のとおり自動的に遺産分割されてしまう可能性があります。分割された遺産が不動産の場合、ここから、特定の相続人だけが所有したり、相続人内での共有持ち分の割合を変更することもあるでしょう。

 

また対象が「不動産」なので、現物を分け合うのではなく「換価分割」か「代償分割」をすることになります。

 

換価分割とは、相続人全員が共有で相続して売却したあとに、売却金額を相続人の持ち分に応じて分割することです。

 

例えば土地の持ち分がAさん1/2、Bさん1/2だったとします。土地を売却した結果5,000万円になったら、持ち分通り2,500万円ずつ分轄します。

 

代償分割とは、相続人の1人が不動産を相続し、不動産の時価から各相続人に持ち分に応じて代償金を払うことです。

 

例えば家の持ち分がAさん1/2、Bさん1/4、Cさん1/4だったとします。この家にはAさんが住み続けるので、売ることはできません。

 

その為、AさんはBさんCさんに対して、家の時価をもとに、代償金を支払うのです。例えば時価が2000万円であれば2,000万円×1/4で500万円をBさん、Cさんに支払います。

 

 

この場合、手続きが煩雑になり、法務局に行ったり、各種書類の用意、契約書の用意などがあり労力もかかります。

 

また、各種税金も発生するので、下記のような面倒なことが多くなります。

 

■贈与税が発生

10年が経過すると、自動的に相続人内の共有持ち物になりますが、そこから名義変更や持ち分の割合を変更すると、土地や家の場合には「贈与」をしたとみなされ贈与税が発生します。

 

■不動産取得税が発生

遺産が「土地」や「家」の場合には、不動産を取得したということになるので、不動産取得税が発生します。このことから遺産を放置せず、10年以内に遺産分割協議を行うのが良いと言えます。

 

 

寄与分を請求できない

寄与分とは、被相続人が財産を維持する為に貢献した人に対し、法定相続分より多く相続することを認める制度のことです。例えば被相続人と一緒に住み、亡くなるまで介護を行った場合、別の場所で暮らしていた相続人より、被相続人をサポートしていたと言えるでしょう。

 

この場合、他の相続人と全く同じ額を相続するのは、割に合わないとも言えます。そういった時に、他の相続人に対して「寄与分の主張」をすることで財産を多く請求する機会が与えられます。

 

遺産分割協議の期限が「10年」になり、協議をせずに放置すると、自動的に法定相続分にのっとり財産が分割されます。こうなった後に、寄与分を請求しても、基本的にその要望は通りません。

 

その為、寄与分の請求を考えている人は、10年以内にきちんと遺産分割協議を行い、寄与分の主張もする必要があります。

 

 

遺産分割協議の期限「10年」以内にやっておくべきこととは?

遺産分割協議に10年という期限が設けられた場合、期間内に遺産分割協議を行うのが良いと分かりました。それに伴い、遺産分割協議をスムーズに行う為に、下記について準備しておくと良いでしょう。

 

 

相続人の特定

遺産分割協議は相続人全員で行わないと無効になるので、相続人を特定することは重要です。

 

ただし、対象の相続人が「相続放棄」をしていた場合には、その人は不参加で問題ありません。

 

また、相続人が行方不明の場合には「不在者財産管理人」を設け、代理人に参加してもらいます。相続人が未成年の場合には、親権者や特別代理人などに、代理で参加してもらいます。

 

 

トータル的な相続財産を把握

遺産分割協議を行う際に、トータル的な相続財産を把握することは重要です。もし遺産分割協議を行っても、他にも相続財産があった場合、また新たに遺産分割協議を行うことになるので手間がかかります。

 

また遺産はプラス分だけではなく、マイナス分も存在します。借金のことも考えたら、そもそも相続自体を放棄するという選択肢に至ることもあるでしょう。その場合には、そもそも遺産分割をする必要がなくなります。

 

このことから、最初にトータル的な相続財産を把握するようにしましょう。

 

 

遺言書の有無を確認

被相続人の遺言書が存在する場合、それを踏まえて遺産分割を行う必要があります。

 

もし遺言書が存在しても、その内容について「相続人全員」が不服で、遺言書通りに実行しない方向で意見が一致すれば、遺言書の内容を実行しないことが認められることがあります。

 

しかし、遺言執行者(※)として第三者が任命されていた場合には、相続人全員の意見があっても、その通りに進められないこともあります。その為、遺産分割協議を行う前に遺言書の有無を確認しましょう。

※遺言執行者…被相続人の遺言を叶える為に、手続きなどを行う人

 

 

遺産分割協議を弁護士に相談するメリット

遺産分割協議のプロというと、弁護士・行政書士・税理士などがあげられます。また、自治体の無料相談窓口での相談も、プロに相談する入口と捉えることもできます。

 

その中でも、特にオススメなのは弁護士に依頼することです。

 

理由は下記の通りです。

 

 

交渉代理を依頼できる

遺産分割協議は相続人全員が参加する必要があります。相続人に対し普段からコミュニケーションが取れて、普通に話しができる関係であれば、代理人を用意する必要はないでしょう。

 

しかし、争いが原因で別居していたり、滅多にかかわることのない親族が相手の場合、スムーズに話し合いができないこともあります。

 

こういった場合に弁護士に依頼すると、担当弁護士が代理で交渉をしてくれます。自分はその結果を聞き、次の行動を弁護士に相談しながら代理交渉できるので、ストレスが少なく済みます。

 

 

スムーズな解決につながる

税理士や行政書士もプロではありますが、交渉事のプロではありません。その点、弁護士は争いをはじめとする交渉事のプロです。遺産分割協議に関する知識・法律的な部分も把握しているうえに、交渉事のプロでもあるので、スムーズな解決が期待できます。

 

遺産分割協議はもめることも多く、長引くほど精神的に負担がかかりますし、金銭面で負担がかかることもあります。弁護士に依頼すれば、一番スムーズに進む方向を目指しながら、早期解決に向けて行動してくれます。

 

場合によっては「遺産分割協議をせずに、相続放棄(※)したほうが良い」など、素人では判断できないことも適宜アドバイスしてくれます。

 

※相続放棄…全ての相続の権限を放棄することを指します。遺産はプラスも、マイナス(いわゆる借金)も含みます。「プラスの遺産だけもらいます」ということはできないので、マイナス分が多いと、相続放棄という形をとるケースがあります。

 

 

財産の調査も可能

遺産分割協議の対象となる財産を把握しているつもりでも、実際には他にもあるかもしれません。また相続人は他に存在するかもしれませんし、行方不明の場合には探す必要があります。。

 

このような「財産」や「相続人」の調査を、素人や税理士・行政書士が行うには限界があります。もし調査できたとしても、かなりの時間がかかります。

 

その点、弁護士はプロなので、調査のノウハウ・知識もあり、迅速な対応を期待できます。

 

 

弁護士にかかる料金は、結果的に考えると高くない

「弁護士は料金が高いので、行政書士や税理士に頼む」と言う人もいます。また「無料の役所の相談窓口で問題ない」と言う人もいます。

 

しかしサービス内容を考えると、特に「交渉事」に関わる分野は、弁護士しか行うことができないと言えます。弁護士にかかる料金は、その分のサービス料と考えると、決して高いとは言えないでしょう。

 

また財産の調査をしてくれるので、弁護士に依頼した結果、把握していたよりも多くの財産を手にする可能性もあります。また法律のプロなので、トラブルに巻き込まれることも少ないので、安心して任せられるでしょう。

 

 

まとめ

今回は民法改正で、遺産分割協議に「10年」という期限が設けられることにより、やるべきことや問題点などを解説いたしました。

 

2020年5月現在、民法改正案の成立はこれからですが、近い将来確定する見通しです。改正案が確定した時に「さあ、遺産分割協議を行おう!」と思っても、すぐに分割できるわけではありません。

 

財産の特定、相続人の調査、各種書類の準備や手続き、契約書の作成など、行うべきことはたくさんあります。その為、遺産分割していない土地や家をはじめ、財産がある場合には、今から遺産分割協議の準備をはじめたり、実際に行うことをオススメします。

 

 

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